簿記の基礎④(減価償却から取得原価主義を理解する)

はじめに

固定資産の減価償却を通じて取得原価主義について解説したいと思います。

取得原価主義とは

取得原価主義とは、取得時の原価を基準にして、資産を評価する手法です。現在の会計基準では、株式等の金融商品を除き、取得原価主義が採用されています。

有形固定資産の会計処理

有形固定資産とは

有形固定資産とは、1年以上使用する予定の有形の資産です。土地や建物、機械装置、備品等が該当します。

有形固定資産の会計処理

前提

×1年4月1日 コピー機を現金30万円で購入。

耐用年数は3年、残存価額は取得価額の10%、減価償却方法として定額法を採用することとします。

耐用年数とは、使用見込み年数です。残存価額は使用後の価値です。

減価償却とは、固定資産の取得価額を使用期間にわたって費用配分するものです。固定資産の価値を減額させ、時価評価をすることが目的ではないことに注意が必要です。

耐用年数と残存価額は、資産の種類毎に税法で定められています。実際の耐用年数や残存価額が税法上の値と異なる場合には、実際の値で計算する必要がありますが、税法上の値を実際の予測値と考えて計算することがほとんどです。

定額法は、取得価額から残存価額を差し引いた金額につき、耐用年数の期間に渡って定額で減価償却する方法です。定額法のほかに、定率法などの方法があります。

取得時(×1年4月1日)

【借方】 【貸方】
備品(資産) 30万円 現金(資産) 30万円

年度末(×2年3月31日、×3年3月31日、×4年3月31日)

1年間の減価償却費の金額は(取得価額30万円-残存価額3万円)÷耐用年数3年=9万円となります。

それぞれの年度末において、下記の仕訳を切ります。

【借方】 【貸方】
減価償却費(費用) 9万円 減価償却累計額(資産のマイナス)9万円

貸借対照表上、備品は、取得価額から減価償却累計額を控除した金額が表示されます。

金額基準

電卓等の少額資産も1年以上使用すると思うので、有形固定資産に該当します。しかし、全ての有形固定資産を資産として計上するのは実務上煩雑です。そのため、税法上の重要性の金額(10万円もしくは20万円)以上の金額の取引を有形固定資産として計上し、それ未満の金額の資産は消耗品費や備品費として取得時に全額を費用処理するのが一般的です。

取得原価主義が採用される理由・前提

時価は見積りの要素が大きく、不確実性が高いです。また、固定資産を売却しないのであれば、時価により評価する必要はないです。そのため、現在の会計基準では取得原価主義が採用されています。

もっとも、取得原価主義が採用されているのは、会社が継続することが前提です。会社の倒産が決定し、資産を継続して利用する見込みがなくなれば、取得原価主義を採用すべきではありません。そのため、倒産時に作成される清算貸借対照表は時価に基づき作成されます。

また、固定資産を使用することにより生み出される利益が簿価を下回る場合には、資産としての価値がないため、固定資産を減損することになります。減損会計については、詳細な会計基準が存在します。新聞等でも「減損」という言葉はよく目にすると思います。

減損会計は、あくまで取得原価主義の枠組みで行われるものであり、固定資産に時価主義が採用されたわけではありません。そのことを理解している旨を会計好きの人に伝えると、会計が分かっていると認識してくれると思います。