確定申告における収入の計上時期について解説したいと思います。
所得税法における事業所得は収入(収益)から必要経費(費用)を差し引いて計算されます。所得税法おいても発生主義の考え方が採用されています。
例えば、人的役務の提供(請負を除く)による報酬については、「その人的役務の提供を完了した日。ただし、人的役務の提供による報酬を期間の経過又は役務の提供の程度等に応じて収入する特約又は慣習がある場合におけるその期間の経過又は役務の提供の程度等に対応する報酬については、その特約又は慣習によりその収入すべき事由が生じた日」に収入を計上することとされています(所得税法基本通達36-8(5)、参考:国税庁HP)。
これによると、国選弁護人は起訴時や釈放時、判決等により活動が終了し、報酬請求が可能になるので、これらの時点で収入を計上する必要があると考えられます(所得税法67条 小規模事業者の収入及び費用の帰属時期の特例適用事業者を除く。)。
付け加えると、国選報酬は接見回数等に応じて報酬が決定されるため、「役務の提供の程度等に応じて収入する特約」があると判断される可能性があります。そのため、接見や保釈許可決定の都度、収入を計上するのが無難です。
判例は収入の計上時期について権利確定主義を採用しているところ、権利確定時期は「それぞれの権利の特質を考慮して決定されるべきものである」としており(最判昭和53年2月24日)、国選契約がどのように判断されるか確定的なことは言えません。ただ、国選契約約款では報酬の算定基準が明確に規定されています。また、解任された場合でも解任時点までの報酬が支払われます。加えて、法テラスの支払い能力に問題はありません。これらの事情を踏まえると、法テラスが行う報酬の算定・通知は権利の確定には大きな影響を及ぼさず、早い段階で権利が確定する気がします。(不服申立てをするような特殊な報酬は別ですが。)
会計の知識がなく、発生主義の概念が頭にない方は、収入の計上漏れが生じてしまうおそれがあります。特に、役務提供完了時期と入金時期が年をまたぐ場合に注意が必要です。
税理士に確定申告を依頼している場合には、税理士に対し、積極的に収入に関する情報を提供しましょう。