公認会計士が財務諸表監査において準拠する「一般に公正妥当と認められる監査の基準」(以下、「監査の基準」といいます。)について簡単に解説したいと思います。
監査の基準は、金融庁の企業会計審議会が定める「監査基準」や公認会計士協会が定める「監査実務指針」等で構成されます。「監査基準」において、監査の目的や原則等、基本的な事項が定められ、その他の基準が補足や個別具体的な場面において実施すべき事項等を定めています。公認会計士試験では、監査論という科目が存在します。
国際的には、国際監査基準が存在します。国際監査基準をそのまま適用している国もありますが、その国の事情に応じて個別に基準を定めている国もあります。日本は個別に監査の基準を定めていますが、内容は国際監査基準と大きく異なりません。会計基準の統一化が図られていますが、監査の基準の方が統一化が進んでいると思います。近年は監査の基準の厳格化が進んでいます。
監査の基準をまとめた書籍として、「監査実務ハンドブック」が公認会計士協会より、毎年度、発行されています。およそB5サイズで2000頁超の内容となっており、かなりのボリュームがあります。毎年、改正及び増量されています。
監査においては、公認会計士が職業的専門家として、実施する監査手続を事情に応じて決定できる裁量があります。そのため、会社法では、監査契約は委任であると規定されています。しかし、詳細な監査の基準が存在するためか、印紙税法基本通達では、監査契約は請負に分類され、契約書に印紙を貼る必要があります。
日本の公認会計士監査制度はGHQの指導から始まり、歴史がそこまで長くなく、また欧米の考えをそのまま導入した側面があるためか、日本では馴染みが薄いものになっている気がします。一般原則である「監査基準」を読むだけでも、何となく公認会計士が何をしているのか理解できると思いますので、興味のある方はご一読をおすすめします。