はじめに
見直しが検討されている四半期開示制度について、簡単に解説したいと思います。
四半期開示制度の概要
上場会社は年に1度、有価証券報告書を作成し、業績を開示しなければなりません。しかし、状況変化のスピードが早まっている現代においては、年に1回の業績開示だけでは、投資の判断材料として不十分であるとして、3か月毎に四半期報告書として、業績の開示が求められています。
四半期報告書では、第1四半期では3ヶ月分、第2四半期では6ヶ月分、第3四半期では9ヶ月分の連結損益計算書や連結貸借対照表などが開示されます。
提出期限につき、有価証券報告書は事業年度終了後3ヶ月以内であるのに対し、四半期報告書は迅速性の観点から、四半期会計期間経過後45日以内と短くなっています。その代わり、四半期報告書の開示項目は、有価証券報告書に比べて簡素化されています。また、四半期決算においては、棚卸資産の実地棚卸の省略などの簡便的な会計処理が認められています。四半期財務諸表に関する会計基準や同適用指針が存在します。
四半期レビューについて
有価証券報告書に対しては、公認会計士による監査が義務付けられています。これに対し、四半期報告書に対しては、公認会計士によるレビューが義務付けられています。
レビューは監査よりも簡易的な手続きにより、財務諸表の適正性を検証するものです。監査では、会計情報と契約書等の証憑との突合や、取引先に対する債権債務や銀行に対する残高確認状の発送が行われるのに対し、レビューは質問や分析的手続が中心となります。四半期レビュー基準及び同実務指針が存在します。
監査が証明、レビューが疎明のイメージだと思います。
四半期報告制度が始まる前
金融商品取引法により、四半期報告書の開示が義務付けられたのは2009年3月期以降です。その前は、半期報告書として、半年に1度、財務諸表の開示が義務付けられていました。
半期報告書に対しては、公認会計士による監査が義務付けられていました。中間監査基準が存在し、年度監査に比べれば簡易な手続とされていましたが、残高確認手続は必要でした。
四半期開示制度の必要性について
状況の変化が著しい現代においては、3ヶ月毎の開示は必要だと思います。例えば、新型コロナウィルス感染症対策として、2020年4月に1回目の緊急事態宣言が発令された際には、強い行動自粛が求められ、経済に与える影響は大きかったです。そのため、2020年4月~6月の会社の業績について、投資家は大いに気になったと思います。従業員の立場としても、転職等の検討材料となった思います。消費者の立場としても、前払いで多額の商品を購入するか否かの判断材料となったと思います。
しかし、四半期開示制度が存在せず、1年間の業績の開示のみでは、業績悪化の原因が1回目の緊急事態宣言の影響なのか、不明瞭となります。また、開示の時期も遅くなってしまいます。
このように、四半期開示制度の廃止のデメリットは大きいです。
四半期開示制度により長期的な視点が軽視されるとの意見があります。しかし、長期的な視点によるメリットについて経営者が適切に説明できれば、投資家は納得すると思います。仮に長期的な視点による利益が失われているのであれば、経営者の説明能力不足が原因です。そもそも、長期的とは3年以上の期間であり、1年間でも短期的な気がします。
四半期開示制度の廃止を訴える経営者は、投資家への説明責任を軽視している気がします。会社を自分のものと考え、お金を預かっているという意識が足りないと思います。
経理担当者の負担が大きいという問題も、簿記を義務教育に取り入れて、国民の会計リテラシーの向上を図れば、解決に向かっていくと思います。