はじめに
現在の会計基準は、発生主義を採用しています。この記事では、発生主義会計について解説します。
発生主義とは
発生主義とは、収益及び費用を発生時点で認識する考え方です。
例えば、3月決算の会社が、契約期間1月から12月まで、家賃総額12万円で事務所を借りたとします。家賃の支払期日が12月末だとすると、実際にお金が支出されるのは12月末になります。しかし、発生主義においては、1月から3月までの家賃は発生していると考え、3月末時点において3カ月分の家賃を計上します。
3月末決算整理の仕訳を示すと次のとおりとなります。
【借方】 | 【貸方】 |
賃借料(費用) 3万円 | 未払費用(負債) 3万円 |
12月末に家賃12万円を現金で支払ったときの仕訳を示すと次のとおりとなります。
【借方】 | 【貸方】 |
未払費用(負債) 3万円 | 現金(資産) 12万円 |
賃借料(費用) 9万円 |
仮に家賃12万円を1月に現金により前払いで支払った場合の仕訳は次のとおりとなります。
【借方】 | 【貸方】 |
前払費用(資産) 12万円 | 現金(資産) 12万円 |
3月末時点において、前払のうち、3か月分を費用に振り替えます。
【借方】 | 【貸方】 |
賃借料(費用) 3万円 | 前払費用(資産) 3万円 |
4月以降に残りの前払分を費用に振り替えます。
【借方】 | 【貸方】 |
賃借料(費用) 9万円 | 前払費用(資産) 9万円 |
未払費用や前払費用を経過勘定と呼びます。
収益については、発生主義の枠組みの中でも、取引毎に応じてさらに詳細な会計基準が存在します。基本的には、売買契約に基づいて物を引き渡した時点や、業務提供が完了した時点で認識することになります。
現金主義との比較
発生主義と比較される考え方として、現金主義があります。現金主義においては、お金の入出金時に収益や費用を認識します。現金主義においては、未払費用や前払費用を認識する必要がなく、複式簿記を採用する必要性は乏しいです。
私は、複式簿記を学習する前は、現金主義が会計のイメージでした。多くの人も同じだと思います。
現金主義は、入出金という成果やコストが完全に確定した時点で収益・費用が計上されるため、恣意性や不確実性がないというメリットがあります。しかし、現金主義では、経営の実態が正確に反映されないとして、現在の会計基準では発生主義会計が採用されています。