会計事件史⑥(東芝事件)

はじめに

2015年に発覚した東芝粉飾決算事件について解説したいと思います。

事件の概要

東芝が、工事進行基準における工事原価総額の見積もりを偽る等の手法により粉飾決算を行っていたことが2015年に発覚しました。第三者委員会の調査報告書が指摘した要修正事項が税前利益に与える影響は約1,500億円でした。

東芝という大企業が多額の粉飾決算を行っていたことから、世間から注目を集めました。また、株式市場の信頼が揺らぎ、大きな混乱が生じました。

事件当時の会計監査を担当していた新日本監査法人は金融庁より、新規の契約締結に関する業務停止3か月、業務改善命令及び課徴金21億円の処分を受けることとなりました。

工事進行基準とは

工事進行基準とは、建設業等の工事におけ売上の計上額の認識に用いられる会計手法です。工事進行基準においては、特定の工事の原価総額の見積もり額に対する、実際の工事原価の発生割合に応じて売上を計上します。

例えば、100億円の工事を請け負い、工事に掛かる原価総額を80億円と見積もったとします。当期において、40億円の工事原価が発生した場合には、100億円÷80億円×40億円=50億円の売上が計上されることとなります。

東芝は、工事原価総額の見積額を過少に偽っていました。

上記の例で、工事原価総額を50億円と過少見積もっていたとすると、売上の計上額は100億円÷50億円×40億円=80億円の売上が計上されてしまうこととなります。

事件の影響

粉飾決算を受け、東芝の2014年度の決算発表は大きく延期されました。また、新日本監査法人から会計監査人を引き継いだあらた監査法人が、四半期決算において結論不表明のレビュー報告書を提出するなど混乱が続きました。

おわりに

市場に大きな混乱を与えたり、決算発表が大幅に延期されたり、結論不表明のレビュー報告書の提出を受けながら、東芝が上場廃止とならなかったのは不思議です。