平成19年度司法試験論文式民事系第1問[設問2]は難問

はじめに

平成19年度司法試験民事系第1問[設問2]が難問である理由を会計の観点から解説したいと思います。

問題の概要

乙会社が甲会社の株式を株式割当により取得しました。その後に甲会社の株価が下落し、乙会社に損害が生じたとして、乙会社の取締役に対し423条に基づく損害賠償責任が問えるかという内容でした。

取締役の任務懈怠が認められると回答した場合には、損害額についても検討が必要となる問題でした。

難問である理由

損害額に関する情報について、甲会社1株当たりの取得価格が300円であるところ、会計年度末の株価が140円と取得価格の50%を割り込んだため、160円の減損を行ったとの情報のみが問題で与えられています。

しかし、減損額は会計年度末時点の株価で測定されており、その後に株価がさらに下落したり、回復したりする可能性あります。評価額が変動する場合の損害賠償額については、最低評価額ですることや、口頭弁論終結時の価格で評価することが考えられます。少なくとも、減損額を損害額と考えることはないと思います。

そのため、問題分で与えられている数値はダミーデータということになり、その旨を回答するのが正しいと私は考えます。

優秀な法律家である司法試験委員がまさか、安易に適当な情報を与えるとは考え難く、商法分野の出題で、損害額論までも問うてくる問題は難問であると思います。(私の考えすぎかもしれませんが。)予備校の解説でも、私が知る限りでは、この問題を詳細に検討しているものは見当たりませんでした。

ロースクールに在籍の方は、会社法の先生に質問してみるといいと思います。