会計事件史②(カネボウ粉飾決算事件)

はじめに

2005年に発覚したカネボウ粉飾決算事件について解説したいと思います。

事件の概要

カネボウが過去数年に渡り、約2000億円の粉飾決算を行っていたことが2005年に発覚しました。

経営陣や、監査を担当していた公認会計士が逮捕され、有罪判決を受けました。担当会計士は粉飾決算の事実を知りながら適正意見を表明していたようです。

また、監査を担当していたみすず監査法人(監査担当時は中央青山監査法人であったが改名)が金融庁から業務停止命令処分を受ける事態となりました。これにより、みすず監査法人は顧客を多く失い事業の継続が困難となったため、解散することとなりました。その結果、みすず監査法人に所属していた数千人の会計士が退職を余儀なくされました。(実際には、顧客とともに他の大手監査法人に移る会計士が多かったようです。)

様々な手法により粉飾が行われていましたが、主たる手段は連結外しでした。

連結外しとは

親会社は子会社を従わせることができ、例えば、親会社が子会社に商品を高く売らせる等の手法で、親会社の利益を高くしたりすることができます。このような事態が生じた場合に、親会社の財務諸表だけでは経営実態を正確に把握することはできません。

そのため、親会社と子会社の財務諸表を合算して、連結財務諸表を作成することが必要となります。連結財務諸表を作成する際には、親子会社間の取引は相殺消去され、利益の付け替えの効果も消滅することとなります。子会社に当たるか否かの判定は持分比率だけで単純に決まるわけではなく、また、間接的に株式を保有していたりするので煩雑になることも多いです。

カネボウ事件においては、業績の悪い子会社を連結の対象から外すことで、連結財務諸表の数値を良く見せていました。

カネボウ事件による影響

大手監査法人であったみすず監査法人の解散により、新たな監査先をみつけることに苦労した企業が多く発生し、大きな混乱が生じました。

また、公認会計士が粉飾決算を知りつつ適正意見を表明していた事実は世間に衝撃を与えました。事件当時、他にも世間的に大きなニュースとなった会計不祥事が相次いで発生しており、会計監査に対する世間の目は厳しくなりました。その結果、金融庁や公認会計士協会による監査法人に対する品質管理レビューが厳しく行われる等の対応がなされているようです。

また、みすず監査法人の顧客が他の監査法人に移った結果、他の監査法人の業務量が増加することとなりました。また、当時はJ-SOX(内部統制監査)に関する準備も必要な時期でした。そのため、監査法人の人手が不足し、公認会計士の就職及び転職はかなりの売り手市場となったようです。(その後の公認会計士試験合格者の増大やリーマンショックの影響で、直ぐに買い手市場に反転しました。最近はまた、売り手市場に戻ったようですが。)

終わりに

不謹慎ですが、会計が注目された点だけは少しだけ嬉しかった記憶があります。