はじめに
後発事象について、個人情報流出を公表したOmiai運営会社である株式会社ネットマーケティングの四半期報告書における疑問とともに、解説したいと思います。
後発事象とは
後発事象とは、決算日後に発生した会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象をいいます。例えば、決算日後に主要な取引先が倒産し、債権の回収が見込めなくなった場合や、天災により重大な損害が発生した場合、不祥事等を起因とする信用失墜に伴う重大な損失が発生した場合が後発事象に該当します。
また、後発事象は、修正後発事象と開示後発事象に分類されます。
修正後発事象は実質的な原因が決算日現在に生じている事象で、貸借対照表や損益計算書の修正を行わなければならない事象となります。上記の例のうち、倒産にいたるような会社は一般的に、決算日時点において経営状態が悪化していたと考えられ、実質的な原因が決算日現在に生じていたといえます。そのため、修正後発事象に該当し、貸倒引当金の追加計上を検討する必要があります。
開示後発事象は、決算日後に発生した事象をいいます。天災は開示後発事象に該当し、注記という形で財務諸表上、開示されます。
ただ、実際には修正後発事象か開示後発事象かが明確でなく、判断が難しいケースも多いです。
株式会社ネットマーケティングの四半期報告書に関する疑問
2021年4月20日~26日の間に、Omiai会員の約171万件の年齢確認書類の画像データが外部に流出した可能性が高い旨が、同年5月21日に公表されました。
Omiaiの運営会社である株式会社ネットマーケティングは2021年5月14日に四半期報告書を開示しています。当該四半期報告書の四半期決算期末は2021年3月31日なので、個人情報流出は後発事象に該当しうると思います。
四半期報告書においても、重要な後発事象は注記しなければなりません(四半期財務諸表等規則第8条)。しかし、上記の四半期報告書には重要な後発事象に関する記述はありません。
約171万件もの年齢確認書類の画像データの流出は、重大な信用失墜や損害賠償責任、調査費用を発生させる可能性があると考えられ、重要な後発事象に該当するとも思えます。情報流出の調査が終わっていなかったのであれば、四半期報告書の提出期限を延長すべきだったとも考えられます。
ただ、情報流出の事実は四半期報告書提出時点では公表されておらず、信用失墜は未だ発生していないと判断されたのかもしれないですし、過失はないと判断されたのか、もしくは保険により損害賠償責任や調査費用がカバーできるのかもしれません。
どのような理由で重要な後発事象に該当しないと判断されたかは明らかでないですが、今後、どのような開示がなされるのか注目したいです。