弁護士や司法修習生が簿記を勉強しない理由

はじめに

司法試験受験後、合格発表までの期間や司法修習中に、法律以外で勉強すべき事項を検索すると、語学や簿記の学習をすすめる記事をよく目にします。弁護士業務では倒産事件や経済犯罪事件、株価算定関連事件を扱う際等に、インハウスであっても財務部門や経理部門との連携を図る際等に簿記会計の知識が必要となります。そもそも、簿記の基礎知識は社会人として当然に身に付けておくべき知識です。

日商簿記検定3級程度の知識であれば、習得までにそこまで時間はかからないですし、語学の学習よりもコストパフォーマンスは高いと思います。簿記の知識の必要性を感じて、簿記を勉強する弁護士や司法修習生も存在しますが、多数派には至っていないと思います。

そこで、弁護士や司法修習生が簿記を勉強しない理由を考察してみたいと思います。

弁護士や司法修習生が簿記を勉強しない理由

他の資格を低ランクと考えている

司法試験は文系最難関の資格試験であると言われることがあります。(実際のところは定かではありませんが。)そのため、司法試験合格者の中には、簿記検定を低ランクの試験と見なし、勉強するに値にないと判断する人がいると思います。

簿記は商業高校において学習範囲になっています。これを受けて「高校生が勉強するものを、弁護士が勉強する必要はない。」と発言する人が何人かいました。この発言に対しては、高校生が知っている知識も身に付けなくて恥ずかしくないのかなと思います。

また、複式簿記の概念を理解するには、それまでの考え方とは少し違った考えを取り入れる必要があります。そのため独学で勉強しようとすると初期段階でつまづいてしまうことがあります。司法試験に合格したプライドから、無意識的に試験に落ちることを恐れて勉強を辞めてしまう人もいると思います。

簿記学習においては、初期段階で誰かに教えてもらった方が無難です。専門学校が安い講座を用意していたり、無料動画も多く存在します。しかし、プライドから、独学に拘ってしまう人もいると思います。

簿記が何かがよく分からない

簿記の勉強をしたことがない人は、簿記が何かをイメージすることが難しいと思います。簿記という単語の響きから、地味で日本特有のものをイメージしがちです。しかし、実際は海外からの輸入品で、世界共通のビジネス言語となっており、非常に有用なツールとなっています。

しかし、法学部では簿記や会計に関連する科目を必修にしておらず、簿記を勉強する必要性を感じる機会が限定されていると思います。

ごく稀に、会社法の計算等の章を読んで会計を理解したと思っている人がいます。しかし、簿記の知識がなければ、会社法の計算等の章を正確に理解することはできません。また、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行(会社法431条)として、多くの会計基準が存在することの理解が必要です。

おわりに

私の狭い交友関係の中での会話や観察に基づく多分に主観の交じった考察結果なので、あまり信用性は高くないです。