会計事件史④(オリンパス事件)

はじめに

2011年に発覚したオリンパス粉飾決算事件について解説したいと思います。

事件の概要

オリンパスが約1千億円の粉飾決算を行っていたことが2011年に発覚しました。

経営陣は逮捕され有罪判決を受ける結果となりました。また、経営陣に対し約590億円の損害賠償の支払いを求める民事判決が2020年10月に確定しました。

当該事件は、事案の真相解明を図ったイギリス人のウッドフォード代表取締役が解任されており、海外でも大きな注目を集め、日本のコーポレート・ガバナンスに国際的批判が集まりました。

主たる粉飾の手口は飛ばしでした。

飛ばしとは

飛ばしとは、含み損を抱えた資産を簿外にすることで、含み損を決算に反映させない手法です。

オリンパスではバブル期に多額の金融商品を運用していましたが、バブル崩壊に伴い、当該金融商品は多額の含み損を抱えることとなりました。当該含み損を隠すために、連結対象外となるファンドを組成し、簿価で金融商品を買い取らせていました。買取資金はオリンパスの外国預金を担保として借入をしていました。

当該借入金を返済するために、オリンパスは子会社の買収費用を装う等して、資金を流用していました。

事件の影響

当該事件が発覚する直前に、オリンパスは会計監査人をあずさ監査法人から新日本監査法人に変更していました。両監査法人も第三者委員会の調査の対象となりましたが、海外の銀行を使っていたことやスキームが複雑であったことから飛ばしの全容解明は困難であり、個別の監査手法に問題があったとはされませんでした。金融庁からの両監査法人への処分も業務改善命令に留まることとなりました。

この頃から第三者委員会が流行り出した気がします。

おわりに

多額の粉飾決算が行われていたこともあり、第三者委員会や金融庁の調査結果によっては監査法人に対して業務停止命令以上の重い処分がなされてもおかしくない事件でした。

そのため、調査結果が出るまでの間、不安を感じていた監査法人の職員も多かったと思います。

ただ不謹慎ですが、いっそのこと、みすず監査法人のように解散になれば、楽に退職できるかもしれないと思った職員もいるかもしれません。

あと、個人では弁済が困難な約590億円もの損害を与えておきながら、実刑にならないのはいかがなものかと思います。