始めに
前回の記事では貸借対照表を解説しました。その流れで、損益計算書を解説したいと思います。
前提
前提として、以下の事例を考えます。
- ×1年 4月1日 預金100円を出資 ①
- ×1年 10月1日 報酬300円の業務を提供(入金は×2年9月30日予定)②
- ×2年 1月1日 150円を銀行から借金し、銀行口座に入金 ③
- ×2年 3月31日 家賃200円(過去1年分)を銀行口座から支払い ④
それぞれの時点の貸借対照表
①の時点(預金100円を出資)
自社の預金(資産)が100円増加。このお金は将来、他人に渡す義務がないので資本に該当し、資本が100円増加。
簿記では、このように一つの取引を2元的に考えます。一つの取引で貸方と借方で同じ金額が認識されるため、最終的な貸方と借方の合計金額は一致します。
【資産】 預金 100円 | 【資本】 100円 |
②の時点(報酬300円の業務を提供)
会計の世界では、業務を提供した時点で資産を認識します。(入金した時点で預金300円を増やし、売掛金300円を減らします。)
自社に将来お金が入ってくる債権(資産)が300円増加。この債権を売掛金といいます。このお金は他人に渡す義務がなく、純粋に資産の増加のため資本に該当し、資本が300円増加。そのため、上記の貸借対照表に資産として売掛金100円を+、資本を100円+します。これを次のように表現し、仕訳を切るといいます。売掛金といった資産等の内訳を勘定科目といいます。
(借方)売掛金 300円 / (貸方)資本 300円 |
【資産】 預金 100円
売掛金 300円 |
【資本】 400円
|
③の時点(150円を銀行から借金し銀行口座に入金)
自社の預金(資産)が150増加。このお金は将来、銀行に返還する義務があるので純粋な資産の増加ではなく、負債に該当。そのため借入金(負債)が150円増加。
(借方)預金 150円 / (貸方)借入金 150円 |
【資産】 預金 250円
売掛金 300円 |
【負債】 借入金 150円
【資本】 400円 |
④の時点(家賃200円(過去1年分)を銀行口座から支払い)
自社の預金(資産)200円が減少。このお金は、純粋に自社のお金を減らすものであるため、資本が200円減少。減少の場合は、増加と借貸反対側で仕訳を切ります。
(借方)資本 200円 / (貸方)預金 200円 |
【資産】 預金 50円
売掛金 300円 |
【負債】 借入金 150円
【資本】 200円 |
貸借対照表しか作成しないことの欠点
このように、貸借対照表を作成することができます。しかし、貸借対照表を作成するだけでは、いかなる原因で資本が増減したのかを把握することができず、会社の収益力を判断することができません。いかなる原因で資本が増減したのかを把握するために作成するのが損益計算書になります。
損益計算書を理解する
上記では、会社の純粋な資産負債の増減を全て資本として認識しました。しかし、いかなる理由で純粋な資産負債が増減したのかを把握するために、出資関係以外取引については、資本ではなく、収益及び費用を使用します。年間の収益合計額から費用合計額を差し引いて利益を算出します。
収益及び費用を集計し、利益を算出した書類を損益計算書といいます。会社の経営成績を把握するための書類になります。
出資関係の取引による資産負債の増減は、事業の営利活動から生じたものではなく、会社の収益力には関係ないため、収益及び費用としては認識せず、資本を直接増減させます。
- 収益=資産を増加、又は負債を減少させるもの(資本を増やすもの)
- 費用=資産を減少、又は負債を増やすもの(資本を減らすもの)
- 利益=収益-費用
以上を踏まえて、前提事例を検討していきます。
①の時点(預金100円を出資)
自社の預金(資産)が100円増加。出資関係の取引のため、収益及び費用ではなく、資本として認識します。そのため、以下の仕訳になります。
(借方)預金 100円 / (貸方)資本 100円 |
②の時点(報酬300円の業務を提供)
売掛金が300円増加します。このお金は他人に渡す義務がなく、純粋に資産の増加になります。また、出資関係以外の取引のため、資本ではなく収益として認識します。
(借方)売掛金 300円 /(貸方) 売上(収益) 300円 |
③の時点(150円を銀行から借金し銀行口座に入金)
自社の預金(資産)が150増加。このお金は将来、銀行に返還する義務があるので純粋な資産の増加ではなく、負債に該当。そのため借入金(負債)が150円増加。
(借方)預金 150円 / (貸方)借入金 150円 |
④の時点(家賃200円(過去1年分)を銀行口座から支払い)
自社の預金(資産)200円が減少。このお金は、純粋に自社のお金を減らすものであるため、負債には該当せず、また出資関係以外の取引のため費用として認識します。
(借方)家賃(費用) 200円 / (貸方)預金 200円 |
貸借対照表と損益計算書を作成する
上記の処理を単純に集計すると、損益計算書と貸借対照表は次のとおりとなります。
- 損益計算書
収益 300円 費用 200円 利益(差引) 100円 - 貸借対照表
【資産】 預金 50円
売掛金 300円
【負債】 借入金 150円
【資本】 100円
計 350円 計 250円
このままでは、貸借対照表の借方合計及び貸方合計が一致しません。原因は資本ではなく、収益及び費用の科目で仕訳を切っていたためです。そのため収益及び費用の金額の差額、すなわち利益の金額が貸借対照表での貸借不一致の金額となります。
したがって、決算整理において利益の金額を資本に加えることで、貸借対照表の貸借金額が一致することになります。
- 決算整理後貸借対照表
【資産】 預金 50円 売掛金 300円
【負債】 借入金 150円
【資本】 資本金 100円
利益 100円
計 350円 計 350円 当初の出資額は資本金という科目を使用します。利益の金額から出資者に対し、配当が行われます。
おわりに
上記では、説明の便宜上、取引毎に貸借対照表を作成しましたが、実際には、期中の仕訳金額を集計し、期末時点で貸借対照表及び損益計算書を作成します。
期中の仕訳を正確に切れば、貸借対照表及び損益計算書が連動して自動的に作成されるのが複式簿記の素晴らしいところです。貸借が一致していることの確認や、預金勘定残高と銀行の残高証明書との照合等により、正確に作成されていることが確認できます。
簿記検定の学習においては、取引の種類が増えますが、上記の仕組みを理解すれば、暗記に頼ることなく理解で覚えられると思います。